七夜「17分割!」

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>339 おやすみはし。
「いいじゃん、いいじゃん」
シュンさんはキラキラと光る眼差しを向ける。
「ええ、長いこと付き合ってちょっと飽きた関係もこれで新鮮な気持ちで楽しめますよ」
「一つ下さい!」
え?三橋に使うの?この間造ったばっかりでもう飽きてきてるの?
それとも新しく造る子に入れるの?
自分で振った話題でなんだが、そんな疑問、お首にも出さずに笑顔で頷く。
「まいどありぃ!」

そうして、俺達は新しい愛玩人への要望等を聞き取って打ち合わせをしていく。
肉体にはほとんど変更はないが、頭の中は弄る余地が結構ある。
それでも、一度うちで造ってくれてるし、お互い通じるところもあって、無理難題を言われる事もなく、打ち合わせは済んだ。
契約書にデジタルサインを貰った後は、雑談をしたり、今日のおやつのパンプキンタルトについて語り合ったりしているうちに、マリアが吸出し完了の報告に来た。
二人に断って席を外し、作業室へ行く。
阿部家の愛玩人を機械に繋いだまま、吸い出したデータを確認する。
こういう場合、一応吸出しミスが無いように2回取り出すんだが、どちらも一部の違いもない同一のデータだ。
「よしよし」
そして、二人で手っ取り早く愛玩人を機械から開放して、全身洗浄して服を着て貰った。

阿部さん達にデータの吸出しの報告をし、愛玩人の房出しの予約を取る。
シュンさんがさり気無くレンを連れて行こうとするのを阻止して、無事、三人が車に乗り込んだ。
そして、工房の皆で三人を見送る。
「さて、と」
これから、吸い出したデータを記憶と人格に分割する作業だ!
ま、房出しの1週間くらい前迄に完了すればいいから余裕だけどな。
それに、房から出した後でも全部上書きするつもりなら出来るし。
ま、そんなことしたら親方からしばかれるからやらないけどね。
表から戻ると、鼻水が垂れそうになって思わず鼻を啜る。ういー、サムサム。
俺がお茶を頼むと、レンが持ってきて、俺に寄り添う。
目だけで何だ、と訊くと、視線を宙に漂わせる。
「おい」