えび「三橋たんただいま!」

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>102 おやすみはし。
「オ、オレ、あの、ズボ、ズボン、ぬがっ……」
「下だけ脱いだら間抜けだろうが!ちっとは頭を使えよ、お前は!」
痛かったのか、頭を押さえて三橋は涙目で阿部さんを見る。
「だ、だって、オレ、知んなくって。く、口で、言ってくれたらよ、良かったのに」
おお〜、なんか反撃っぽくなってるぞ、非常に小声だが。頑張れ三橋。
と、思ったらムカついたのか阿部さんは無言で三橋にもう一撃加える。
「イタ!」
頭を抱えて丸まった三橋の姿は庇護欲と攻撃欲、相反する欲望を掻き立てた。
ヤバい、少年愛は異性愛と同系列に在るけど、青年相手は確実にガチだ。
「お前は一から十まで教えてもらわなきゃ何にも出来んのかよ、何の為に付いてる頭だ?
脳味噌の代わりに蟹味噌でも詰まってるんじゃないか」
「ち、ちがう」
「じゃー叩いた事でちょっとは動きも良くなっただろ、感謝しろよ」
あまりの言い草に流石の俺も立場を忘れて口を出す。
「ちょっと待って下さい。三橋君はまだ目覚めてから1時間も経ってないんですよ。
出来ないことは、怒らないで優しく教えてあげて下さい」
阿部さんにジト目で睨まれた。
「お前は黙ってろ」
あ、俺もしかして空気読めてない?……これじゃ店員失格だ。
「すみません」
ションボリと俺は部屋の片隅で小さくなる。って言うか、余計な口を出されたくないなら、出て行くのを止めなきゃいいのに。
微妙な空気に怯えたのか、三橋が手を付いて謝った。
「ご、ごめんなさ、い。ありがと、ございましゅ」
三橋の頬を涙が一筋流れる。そんな三橋を見て、阿部さんはとても嬉しそうになる。
俯いた三橋が阿部さんを目にしていないのが、勿体無いくらい素晴らしい笑顔だ。
ま、阿部さんも三橋に見つめられたままじゃ、あそこまで爛々と目を輝かせられないだろうから、仕方ないか。
阿部さんはクックックッと喉の奥で笑って三橋の前髪を掴み、顔を上げさせる。
じろりと見られて、三橋が縮み上がる。
「よく言えたな」
ペロリと舌を伸ばして阿部さんは三橋の頬に未だ流れる涙を舐めた。
怒られると、身を硬くした三橋は突然の事なのに、やぁんと甘い声を出した。