>>700 ※鬱注意 ここまで
学校に行くのが憂鬱だったが、時計を見ながら機械的に体を動かしていつもの時間に家を
出る。
自転車に乗ると耳に当たる風がずいぶん冷たかった。
ここ最近朝晩の冷え込みが強くなってきて嫌でも季節の深まりを感じた。
寒さが体が固くなるとケガの元だから、練習の時念入りにストレッチしなければならない
なと野球のことに結びつけてしまうのは、もう習性みたいなものだった。
まっすぐ部室に寄り練習着に着替えてグラウンドに行くと、半分くらいの部員が集まって
いた。
各々挨拶を交わし昨日見たTVの話などをしながらトンボで地面をならすいつもの光景。
シューズの紐を結び直すためにしゃがむと足先に人の影が落ちた。
目を上げると思った通り三橋だった。
「…おはよう、阿部君」
「…はよ」
俺は紐をきゅっと締め立ち上がると三橋の顔を黙って見た。
言いたいことがある時、三橋はすぐ顔や態度に出るのでわかりやすい。
だが今の三橋は俺の言葉を待っているようだった。
「…昼休み、屋上で」
「うん、わかった」
短いやりとりの後、くるりと背を向けみんなに混じって練習の準備を始めた三橋の後ろ姿
を、俺は複雑な気持ちで眺めた。