リュウ「レンレン、エロ本Getしたんで後で見ます?」

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53fusianasan
※子三橋には優し(略 注意

その日の朝はとても冷えた。
体の芯が引き締まるような空気を、陽が高さを増す毎に掻き混ぜ暖めていく。

木の陰になっているせいかズボンに潰された下草は少し湿っていて、手の平と膝で抱え込んだ弁当の味を涙と一緒に滲ませた。
錦糸たまごとウィンナーに黒ゴマで作られた小さな目。
ブロッコリーとうずらのタマゴにも同じく黒ゴマで目が描かれ、
父と母を連想させる二種類のおかずの間には『がんばれ!』と手書きされた小さな旗が飾られていた。

ぐじゅ。

がんばれ、が指しているのは今日の写生大会のことだ。
日なたの喧騒に交じれと言われているわけではない。
三橋のいる木陰から数歩しか離れていない眩しいほどの光の中では、
同級生たちが数人ずつのグループに分かれて弁当を広げている。
後ろを振り向いた窮屈そうな姿勢や、地べたに落としたおかずをより分けた弁当箱のフタや、
トレード先のないグリーンピースですら羨ましい存在に思えた。

……オレ、しっかり しな、きゃ。

光の中に進む勇気はなくても。ハナマルもらえる絵がかけなくても。
お弁当、おいしかったって。
からっぽにして、ぴかぴかに洗って、それで、栗ごはんのゴマ塩、次は忘れないでって言うんだ。お母さんに。


おわり。