スライディング三橋「す、すす滑り込み セーフ?」

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972fusianasan
「追い鰹をここで加えれば 香りが良くなるんだ よ 今日は入れない ケド」
ハイハイと生返事してみたものの、実は良く分っていない。追い鰹って何だよ、カツオが追いかけてくるのかよ
「良くみてて ね お味噌は手早く入れて 溶かして ね 入れたら煮立たせちゃ 駄目なん だ」
うん それは家庭科でやった気がするよ。俺は味噌汁に向かう三橋の横顔を眺めている。
三橋は俺の方には余り気にも留めずに味噌汁作りに集中している。
箸でクルクル味噌をお玉の上で躍らせている。程無く味噌は鍋へと拡がっていく。
視線は鍋に落とされたまま。まあ、真剣な横顔ってのもいいもんだよな。
「溶かし終わって お鍋の中で お味噌が雲みたいにフワってなったらお終いだ よ」
美味しい匂いがするよ ね と呟きながら鍋に蓋をする。俺は戸棚から茶碗やらお箸やらを出し始める。
レンレンって書いたマジックが消えかかった湯飲みを見て笑いがこぼれる。後でまたなぞって濃くしてやろう。
「来週、オレ群馬に行くからいないけど お味噌汁大丈夫?」・・・笑っていたのが気に障ったかな?まあいいやな。