俺A「おはよう、三橋たんの…」

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37影法師
>>34      ※鬱注意     ここまで

一生懸命に言葉を探して俺に伝えようとする三橋に「もうやめろ」と言いたくなった。
体だけ気持よくなったって、お前は何も受け入れてなんかいない。
犬にされていたのだと三橋は俺に打ち明けた。
気持ち悪いことや汚いことをたくさんさせられたのだとも。
それらに性的な行為が絡んでいるのだとしたら、普段は表面に現れない心の深層でセック
スを嫌悪していたって何の不思議もなかった。
意識が浮遊するような感覚やパニックを起こすことだって、セックスから逃れるために必
死で発したメッセージなのかもしれない。
俺は三橋との契約みたいな関係に困惑しながらも、それを三橋が望んでいるのだからとご
まかして今まで真剣に考えていなかったように思う。
事態は俺が捉えているより多分もっと深刻なのだ。
無力感に打ちのめされて俺は何も言えずに三橋の手を握った。
三橋は痛ましそうな目で俺を見ていた。
労られているのは俺の方だった…。

適切な医療機関に行くよう時期を見て三橋に勧めてみるつもりだったが、奴は俺に個人的
な話をさせないことに決めたらしかった。
野球部の練習の時も、他の人間にはいつも以上に頑張っているようにしか見えないだろう
が、その実三橋は俺に話しかける隙を与えないようにしていた。
練習が終わっても田島や泉とくっついていて、俺が花井たちと話している間にそそくさと
帰ってしまう。
だが、三橋がふとした瞬間にひどく疲れた顔をするのはチームのみんなが知っていたし、
目の下の不健康そうなクマも色が濃くなる一方で消えることはなかった。
「…お前、寝てないだろ」
すれ違いざまにそう言ってやると、三橋は俺の方を見ようともせず「…寝てる、よ」と小
さな声で返した。