秋丸「ミハしり追〜いし香具山〜」

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794fusianasan
※一発書き ※読みにくい

気がつくと三橋がボロボロと泣いていて、
あんまり泣くもんだから体の水分が全部出て行っちまうんじゃないかと、
それ以前に涙の塩分でまた頬がガピガピに傷んで真っ赤になちまうんじゃないかと心配になって
もう泣くなと幾筋も頬を流れる涙を拭ってやるために伸ばした手はどういうわけか届かず、
そばにいるはずなのに遠いような感覚で不思議に思うが視線は三橋に固定されているから
周りの状況もわからずただ涙を流す三橋を見ていることしか出来ず、
もう子一時間ほどそうしているような気がしてせめて声を出そうにも喉の奥が締め付けられて声も出ず
ごめんなさいと繰り返す声だけが響くその空間で途方に暮れ続けながらも記憶を辿ってみると
いつものように帰宅して、三橋を抱き締めたところまでは思い出せたがその先は曖昧で、
さらに記憶を遡ってみるがその前のことをいくら考えたところであまりにも日常通りだったため
別段変わったことも思い出せず、おそらく三橋が俺に何かしたのだろうということだけが朧げながら
理解できるようになり、今朝家を出る前の三橋のことを思い返してみても特に変わった様子はなく
恥じらいながらも俺の首にネクタイをかけ、キスをして、俺の肩に頭を乗せて軽く喘ぎ、
名残惜しそうに俺を見送る真っ赤な顔が可愛くて今夜は出来るだけ早く帰ろうと考えたんだったと思い
そんな浮かれた気分だったから珍しく三橋の好きなケーキを買って帰ったんだが
そのケーキも嬉しそうに受け取っていたはずだから別に機嫌が悪かったわけでもないのに
何がどうなって俺が今こうしてロープで全身をがんじがらめに縛られ
首にいたっては何かガーゼのような感触のもので締めるように巻かれた上に、
口も塞がれている状態に陥っていることが理解できず、唯一自由を奪われることのなかった目だけを動かし
三橋に目で訴えてみるが三橋はまだボロボロと泣くばかりでなんだかだんだんうざったくなって
この野郎という気分にもなるがそれなりに愛している三橋に暴言を吐くわけにもいかず
その前に今のこの状態では何も出来ずああ俺はただケーキに混ぜた睡眠薬で三橋を眠らせ
その隙に縛ってソフトSMみたいのをしたかっただけなのに三橋はそれがよっぽどイヤだったのかと
何となく思い至りそれならもうそんな不埒な真似はしないからと優しく弁解して宥めてやりたいと
思うもののそれも叶わず三橋が泣き止むのを待つばかりなのであった。