ゴジラ「がおー」

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609アントールド ◆YlCy0FmBNY
>>606
いつもみたいにといえば、三橋は今日だっていい球投げてた。
オレよりビビリのくせに、試合中のどんな怖い場面でも壊れない。
こんなひどい災難をたった一人で背負わされても自分が悪いと思って、憎むとか恨むとかそういうの、しないのか。
もうわけわかんなかった。三橋はどっかおかしい。好きだと思うと泣きそうになる。
「な…なんで、もっかいキス、したいの」
「オ、オレ、うれし かった、カラ」
心臓とそこらじゅうの脈がドクンとした。気合もリラックスもすっ飛んだ。
2回目のキスの感触はさっき初めてしたときと同じで、それより温度だけ熱い気がした。
おそるおそる顔を離したら、三橋がパチパチまばたきをしてフヒッと笑った。


「写メ?み、三橋、あんなのマジで脅しに使えるって…思ってる?」
「う…、お?」
聞き出した脅しのネタは、一度目が野球賭博の作り話、二度目はあの写メを高野連に突き出すって話だった。
唖然とした。
「あんなもん、仮にネットに流されても誰だかわかんないじゃん!下向いて顔写ってないし、アザとかホクロもないだろ」
オレが三橋だとわかったのは、三橋を知っていて、しかも発信が三橋の携帯だったからだし。
言って、ハッとした。一度目をすぐウソだと明かして、二度目があんなピンボケ画像…これも絶対ハッタリだ。
命令に従わせた後、何てことない画像だと三橋に言うつもりじゃないのか、一度目みたいに。
作り話に騙され、見せたくない格好を友人宛にメールされ、泣きじゃくる三橋を笑った、そいつ。
オレの方がよっぽどおかしくなりそうだ。また脳みそがザアッとなった。百万回殺したい。
「三橋、次に呼び出されても行っちゃダメだ。あの写メも落ちてた金使ったことも、話になんないよ」
「ほ、ほんとう?オ オレ、野球、続けていいの かな」
「…へ?ま、まさか、やめようと、した?」
「あ…う、ぁ」
こんな投球ジャンキーがそんなこと考えてた。
もういい。三橋が憎悪って感情をどっかに落としてきたんなら、オレがその外道のオッサンを二倍憎んでやんよ。

 ここまで