ゴジラ「がおー」

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440偽りの螺旋・阿部の場合
扉の外で寒風が吹き荒む中、暖かい部屋の中で俺とルリは神経衰弱に熱中していた。
カランコロンと店の扉の鈴が鳴りながら、勢いよく開いた。男が二人入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
男達と共に入ってきた寒風が俺の顔を撫でて、首を竦めながら俺とルリは慌てて立ち上がって出迎える。
20代半ばと思しき垂れ目の二人は、兄弟なのかよく似た顔立ちだった。
カジュアルなスーツと言う装いは結構、高価そうで俺はしめしめと思う。
「こんにちはー。レン君いるぅ?」
弟らしき方が一歩前に出る。
「はい、居りますが、お知り合いですか?」
俺はルリに目配せして奥からレンを呼ぶよう命じる。
「シュンッ」
兄らしき方がレンの服を引っ張る。
「は〜い、兄ちゃん」
「栄口勇人博士のインタビューでそちらの愛玩人を購入したと目にしたんですよ」
ああ〜そう言えばそんな事も有りましたね。
「それはそれはわざわざ足をお運びくださいまして有難うございます」
そう答えながら、阿部と名乗った男にソファを勧める。
机の上に広がっていた筈のトランプは既に片付けている。流石だ、ルリ!

今月は何件か、ドクターゲーリーで知ったと問い合わせが有った。流石は有名人だ。足を向けて眠れないなあ。
俺は奥の培養室の中で、数日後に開封される培養房の中、今はただ眠るミハシ型の事を思い出す。
俺が心の中で手を合わせていると、レンがやってきた。
掃除をしていたのか、手にしたハタキをルリが慌てて奪っている。
「こんにちはっ!」
「こんにちはぁ」
レンの挨拶にシュンさんが挨拶を返す。阿部さんは腕組みをして、レンを上から下まで眺める。
服は一応エプロンでもしてたのか、掃除の汚れは付いてないな。あ、でも寝癖か三角巾癖か髪にちょっと癖が付いてる。
「なかなか可愛いね、兄ちゃん!」
「そうだな」
ニヤリ、と阿部さんが邪悪な笑みを浮かべる。
ドキドキしながら固まってたレンはその顔を見て更に固まるが、平静を装いながらもドキドキしてた俺はホッと緊張を解く。
「今日は、レンを試用すると言う事で宜しいのでしょうか?」