腹が治ったので一部地域解除しにきた
※前スレの174辺りからの続き
※捏造注意
※エロはまだない
「に、荷物、運び、終わり、まし、た」
今しがた階段を降りてきた中村の声で現実に引き戻される。
よっぽど体力を使ったのかゼェゼェ息切らしながら俺の元にやってきた。
やっぱり50キロそこそこを二階まで運ぶのは楽じゃなかったか?
病気だからって全く動かない訳にはいかない。
動かねえと余計に体力が落ちそうだと心配して、部屋は二階にしておいたんだが、こんなところでマイナスになるとは思わなかったな。
仕方ねえ、これに免じて運送会社に苦情の電話をするのはやめておいていてやろう。
「これ、受領書です。すんません、有難うございました」
荷物を運んでもらっている間にぱぱっとサインをした受領書を渡す。
「ど、も、有難うございました」
息を整えつつ礼をする中村。
何だ、いい奴じゃねえか。
「また何か有ったら宜しくお願いします」
「…はい」
社交辞令にも似た挨拶に対して、また嫌そうな顔と声で返してきやがった。
前言撤回。
やっぱ嫌な奴だこいつ。
>>899 さて。
ゆっくりと椅子から腰を上げ自室へ向かう。
やっべえ心拍数上がってきた。
ずっと待っていた荷物が届いたんだ。心躍るとかそんなレベルじゃ喩えられない程高揚している。
深呼吸をして逸る気持ちを落ち着ける。
―もう一つの頼み込んだこと。
俺にロボットのお手伝いをつけてくれ。
俗にいうメイドロボ、だな。
世間ではまだ開発途中としてしか話題に出ていないが、実は闇ルートで手に入れることが出来るくらいまで今の技術は発展している。
資産家の情報は結構広いもんだと思い知った。
母親に、人間の家政婦じゃ駄目なのかと問われたが、人間相手だと気ぃ遣うっつって断った。
俺のこと知らねえ奴でも、こんな情けない姿見られたくねーし。俺って実はプライド高かったんだな…榛名のこと何も言えねーじゃん。
そんな訳でくそ高い、0が何個もつくメイドロボを手に入れることが叶った。
「…ふう」
ようやく部屋に着く。
階段を昇りきって一つ息を吐いた。
階段を昇り降りする度に、やっぱりエレベーターぐらいつけてもらえば良かったかなと少し後悔する。
今更だけど。
>>900 気を取り直し期待と興奮と緊張で汗ばんだ手でドアノブを回す。
部屋に入り、ベッドの横に置かれた荷物をそろそろと紐解く。
そう、届いた荷物。これがメイドロボ。
海外の、表向きはロボットの開発研究を手掛ける会社、裏では金さえ出しゃどんなロボットでも作る結構黒い会社のオーダーメイドのロボットだ。
流石に兵器ものは作らないらしいが。
俺が作ってもらったのは、高校時代、恋こがれた投手のロボット。
初めはめんどくせえ奴だと思ったし、今でも思い出しただけでイラっとすることも有るけど。
それでも、俺はいつの間にかあいつに惹かれていたんだ。
気付いたら恋に落ちていましたっていう乙女な俺。自分で言うと悲しくなるがきめえな俺。
でも仕方ねえじゃん。あいつと三年間バッテリーやって、揉めたりしたことも有ったけど、なんだかんだで最後には分かりあえて。
あいつのいいところも悪いところも見たけど、あー、何だ、愛しく思えたんだ。
流石にこの気持ちは三橋には言えなかったけど。
…言える訳ねえよ。
本当は全部ぶっちゃけて、恋人みたいに手繋いだり、デートしたり、キスしたり、セックスしたりしたいと思ったけどさ。
>>901 ぶっちゃけて、俺と三橋がギクシャクしたら、野球どころじゃなくなるだろ。
そんなことになったらあいつが今まで努力して、中学時代、嫌われてでもマウンドにしがみついていた意味がなくなっちまう。
それだけは嫌だった。
それなら、それなら俺は自分の気持ちなんか心に閉まっておこうと思った。
ま、そんなこと思いながら、未練タラタラだけどな。
卒業して離れ離れになってもまだ三橋への気持ちは冷めていない。
むしろ離れた今の方が恋しくて仕方ない気がする。
だからって会いはしないが。
あいつには病気のことも言っていないし、卒業したら海外で暮らすっつってあるしな。
そう伝えた時の三橋の顔はしっかり覚えてる。
今にも泣きそうなのに、必死に笑っていた。くしゃくしゃでぶっさいくな顔をして、
『行ってらっしゃい、また、会おう、ね!』
って言ったんだ。
約束は、しなかった。
会えたらいいな、としか返せなかった。
約束なんかしたら、俺が泣き出してしまいそうだった。
ここまで