>>415 /沖
公園のそばをフラフラ歩いている三橋を見つけた。
家を出たオレは電話を何回もかけながら、車の走り去った方向の少し開けた所であちこちの店やホテルに闇雲に入った。
画像で三橋が座っていたのがベッドだったから男の家かもしれないと思ったけど、探さずにいられなかった。
あの画像が今日撮られたものじゃない可能性なんて、ついさっきまで思いつきもしなかった。
ラブホ、飲み屋、カラオケ屋の廊下とかで何度か怒られ、結局最初の公園に戻って三橋の自転車が置きっぱなしなのを確認したところだ。
「三橋!」
大声で呼んでも気づかない。走っていって腕をつかんだ。三橋の肩からでかいバッグがずるんと落ちた。
「ひっ、うあ」
三橋はバッグをほったらかしていきなり走り出し、転んでしまった。
「みはし、大丈夫?」
「…ぅ、う」
チャリンと音がして小銭が転がっていく。三橋のズボンのポケットを見ると、千円札がはみ出していた。
「お お金、オレ…足りなかった カラ。おかね、払いなさいって…ごめんなさい、ごめ」
「何言って…、ケガない?立てる?」
立たせようとしても、足の力が抜けてしまっている。誰もいなかったし、三橋が落ち着くまでと思ってオレも座った。
「とっ、途中で、どうしても み 道、わかんなく て…!オレ、た タクシー、も」
ぼろぼろと涙をこぼして、三橋は何度もごめんなさいと言った。
混乱してるみたいで言ってることが全然わからない。なぜか金を使ったことを必死に謝っている。
近くに落ちていた百円玉を2枚拾って三橋に渡そうとすると、首を振って喋れないほど泣き出してしまった。
あの写メの話なんかできる状態じゃない。
三橋が泣いてる。三橋が泣くとオレも泣きそうになる。なんか悲しい電波が出ていて、オレはそれを受信しまくる。
何か言っても声が震えそうで、頭をなでようとした。はじめビクッとされたけどそのままなでた。
細い髪は湿っていて、シャンプーのいいにおいがした。
家まではもたなさそうな三橋を支えて何とか公園のベンチまで連れて行き、ぐったりと座り込んだ。
公園の時計が3時を指していた。