阿部「三橋、オレの事どう思ってんだよ」

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751理不尽
「やめてくださいよ、謝ってるじゃないですか‥」
「何だとコラァ。このシャツいくらしたと思ってんだ!」
「‥‥」
「財布出せ財布!」
オレは勤めていた会社から駅に向かう途中で、揉めている人達を見かけた。
若い大学生と、怖い人、きっと暴力団の人。
街の人達はその二人を見るんだけど、声を掛ける人はいない。
大学生の男の子は悲しそうな顔をして財布を出す。
なんだか、オレの中で正義感みたいのが湧く。
理不尽だ、だめだ、お金を渡したら。
「ど、どうしたんですか!」
気がついたらオレは怒鳴るように二人に声をかけていた。
「ハァアアアア?なんだテメェ!!」
「も、揉めているよーなら、け、警察呼びます!」
オレはケータイを取り出してすぐに110番にかけた。
「おい!どこに電話してるだコラァ」


中途半端な勇気がいけなかった。
中途半端な正義感がいけなかった。
もっと冷静に対処したら、こんな事にはならなかったかもしれない。
何度も後悔する。何度も後悔してる。
理不尽な社会に捨て身で立ち向かったつもりだった。
それなのに怖い、結局オレは自分が大事だから。


大学生は素早く逃げた、走って小さくなっていく彼。
オレはその様子を見ながら我に帰った。ヤクザはオレのケータイを奪って
「テメェ、来やがれ!!」
とオレの腕を引っ張って路地裏に連れて行く。