「明日三橋来るから」
兄ちゃんが言ったその言葉にオレはTVのリモコンをいじる手を止めた。
お母さんがあらそうなの?と対応してる。
「夜に来るの?」
「明日練習早く終わるから、4時くらい」
「そうなの。お母さん用事あるから帰るの8時くらいになるけど、三橋君はそれまでいるかしら?」
「あー、いるんじゃね?」
「じゃあ夕飯作っておくから、食べてもらって」
その後あれとかこれとかのお菓子もあるし、冷蔵庫にプリンとか苺もあるからねとお母さんがどっか嬉しそうに言っている。
お母さんは三橋さんを気に入ってるから、食べっぷりのいい三橋さんに色々食べてって欲しいみたいだった。
兄ちゃんはあーとかうんとか適当に返事して、オレのほうを向いた。
「シュン、お前何時に帰ってくんの」
ぎくりとオレは息を飲んだけど、なるべくおざなりな声を出した。
「明日練習の後友達と遊んでくるから・・・多分7時くらい」
フーンとそっけない声が返ってくる。それで会話は終わった。兄ちゃんは自分の部屋に戻ってったけど、オレの心臓はばくばくいってた。
友達と約束があったのは本当だ。日曜日だから、思い切り遊ぼうって話になったんだ。
オレだって楽しみだった。
けどばくばくしてる心臓とは裏腹に、オレは冷静な頭で友達に断りのメールをいれなきゃと思ってた。