※以前のやつはwiki2で
「どういうこっちゃ……」
俺を包む魔法の力とでも言うのだろうか。
それが極端に薄くなった気がする。
飛べない。
「そ、そんなはずは……魔法も使えない童貞なんてただの生き恥じゃないか」
猛烈に襲ってくる虚無感。
目の前が真っ暗になりそうなほどの絶望。
「飛べ、飛べ……」
再び箒に跨り、強く念じる。
すると少しだけ、自分にかかる重力が軽くなったように感じる。
しかし、体は浮かない。
「飛べ……飛べよ、飛んでくれよ」
強く、強く、自分が空を舞う姿を思い浮かべる。
箒を握る手が、強く握り締めすぎて痛くなる。
そんなことをいつまで続けていたのだろう。
飛ばない。それが答えだった。
次第には自分がどんな風に飛んでいたかもわからなくなって。
俺は無性に手にしている箒が憎くて堪らなくなった。
「ちくしょおおおおお!!」
思い切り力を込めて、箒をぶち折っていた。
ぱきぱきと鮮明な音を立てて、竹の破片が飛散していく。
その一つが頬を掠めて、スパッと小さな傷を作った。