>>193 「はあああああああ!?」
「ひいっ、ごめんなさぁいいい」
だからお前に怒ってんじゃねえよ!
オレは目の前にいる三橋を眺める。
背は高くないし体もまだ細いけど女と見間違えるような体系じゃないよな。第一こいつカッターシャツに学生ズボンで登校してるし。
ケツ触られたって、それチカンじゃねえか。
すげーな、チカンって実在すんのか。しかもホモ。
「どこで」
「チャリ、乗って、コンビニ、とこ、し、信号、待って、たら」
後ろからむにゅっと。
「そんだけ?」
なんかもっとすげーやらしいのを想像してたオレは拍子抜けした。
「そ、そん、だけ…です」
だから、一晩眠れば、大丈夫、と鼻をすすりながら三橋は続けた。
「泣くほどのことかよ」
「だ、だから、言うの、や、だったんだ! …よ。カッコワルい、か、ら」
「…泣いてんの、それでか」
ヒザの上の手にぎゅっと力がこもったのが見えた。
どうすっかなー。よくわかんねーけど一晩眠ってすっきり忘れそうなタイプでもないしな。
━━━なかったことに、してやるか。
オレは立ち上がると自分のカバンの中を探った。
なんでもいいんだ、塗り薬なら。
入れっぱなしのハンドクリームがあったのでそれを手に隠し、もう一度三橋の傍へ戻る。
「あのな、ナイショにしといて欲しいんだけど」
「……な、に?」
オレは自分で笑っちゃわないようにぐっと頬に力を込めた。
「そういうの、なかったことにできる薬持ってんだ」