>>615 会社に行ってくれよん
>>611>>615 ※阿部獣化注意 ここまで
いきなり話が俺の方に来てギクリとした。
三橋は泣き顔のままあーとかうーとか一生懸命に考えているようだが、混乱して頭が回ってい
ないのがよくわかる。
いっそ本物だと言ったらおばさんはどんな反応をするのかな、なんて他人事のようなことを考
えている俺も危機感がないこと甚だしい。
薄目を開けて事の成り行きを見守っていると、おばさんがこっちに近づいてきた。
「黒豹の剥製なんて初めて見たかも…。本当にどうしたの?これ」
「…しゅ、修ちゃんが、合格祝いだって くれたんだ!お、おじいさんが、昔外国で買ったら
しいよ!」
おお、三橋にしては気の利いた答えだ。見直したぜ。
叶んちは医者の家系みたいだから、三橋はもしかしたらそういうものを実際にあいつの家で見
たことがあるのかもしれない。
「あら、目がちゃんと開いてないのねえ。失敗作かしら?」
おばさんはすぐ側に立って俺の頭を何度か撫でた。
「なんだか生温かいような…ホントに生きてるみたい」
「だっ、だめだよ、お母さん、毛がすごく抜けるんだよっ」
「毛ぐらいどうってことないわよ。わあ、豹の耳ってこんな風になってるんだー」
「おお、お母さん!そ、そうだ、ダニ!ダニがいるから触っちゃダメなんだ!」
「ええーっ、早く言ってよ。そんなもの置いといたら病気になっちゃうわよ。叶くんには悪い
けど処分しちゃった方がいいんじゃない?」
「そんなのできないよ、だってこの豹は…!」
三橋の目にまた涙がぶわっと盛り上がった。
が、今度は泣き出さず手の甲で涙を拭うと、おばさんの手を掴んでぐいぐい引っ張る。
「お母さん、外に行こう!オレ、買い忘れたものあるから、付き合って!」
「ちょっと廉、わかったからそんなに引っ張らないでよ。もうっ、手を離してちょうだい!」