スレタイ「三橋うp」

このエントリーをはてなブックマークに追加
38ペトルーシュカ ◆rsyjg5KHN2
*解釈によっては死にネタ注意

夜になったというのにどこか蒸し暑い感じがする。夏の夜はなぜか他の季節と比べて賑やかな感
じがする。彼岸ということも関係しているのだろうか。
今日は朝から阿部の家で宿題を見てもらっていた。とは言うものの、勉強なんて最初の数時間程
で中断して、後は延々と繋がって体の奥を蹂躙されていたのだが。
阿部に甘い声で泊まっていったらどうだと言われたが、明日は朝から群馬のほうに墓参りに行く
ので断った。残念な気持ちもあったがそれ以上に幸せでどうにかなりそうだった。
今日はいいことばっかりだった。気分が高揚し、体まで軽くなったような気がする。今ならバレ
リーナのようにくるりとターンも鮮やかに踊れるかもしれない。
ふと気づくと、前から誰かがこっちにやってくる。
「…シュンちゃん?」
「あ、三橋さん。お久しぶりです。」
シュンと三橋はかつて付き合っていたことがある。三橋はシュンに阿部を重ねていたのだ。自分
でも気づかないうちに。だがちょっとした偶然の積み重ねのせいで二人は別れ、今では遠い、遠
い人になっていた。
「三橋さん、これから家に帰るんですか?俺も家に帰るとこだったんですよ。兄ちゃんとはうま
くやってるんですね。」
複雑そうな表情をしていた。…こんな顔をさせているのは自分のせいだ。
口を開こうとしても、上手く言葉が出てこなかった。
「じゃあ、夜遅いから気をつけてくださいね。」
気まずい空気の中、俺達は人形みたいなぎこちない動作で手を振りながら別れた。

かつてムーア人が振りかざした刃は、ペトルーシュカの中のおがくずをぶちまけた。
だが散らばったのは果たして本当におがくずだったのだろうか?

哀れな人形の慟哭が響いてもきっと彼は気づかないのだろう。
彼は魔術師ではないのだから。