三橋が転んで怪我をしたので、水道で軽く洗ったが膝小僧の血は止まらない。
しょうがないからガーゼで押さえるついでに消毒しようと保健室へ向かった。
だが鍵は開いているものの保健の先生は不在だった。
阿部と三橋は、直ぐに戻って来るだろうことを予想して先生を待つことにしたが、
消毒液だけは勝手に使わせてもらっていた。
「そういや三橋、オマエ視力いくつよ?」
「えっと・・・わ、忘れた」
阿部は、普通忘れるかよ…と小声で言いながら近くの検査板に立って指をさす。
「これ見えるか?」
「え・・・ み、みぎ です」
「バーカ。片方はつぶれよ。右目かくして左目つむって。これは?」
「・・・・見えません。」
三橋は阿部の言葉の間違いをそのままに両目をぎゅっと瞑っている。
「あ〜・・・違った。右目だけ開けろ。・・・・これは見えるか?」
「う、え」
正式な検査でもそうするように、穴の開いた方を指さして三橋は自信無さ気に答えた。
「じゃ、コレ」
案外目は良いんだな、と感心しながら阿部は次々に指をさしていく。
素直に答える三橋を見て、阿部はサラッと何でも無いことのように聞いてみた。
「じゃあ・・・オレは?」
「えっ?」
三橋は質問の意図が読めずに、閉じてした片目を開いてパチクリと瞬きをしている。
「オマエから見て、オレを恋人にすr」
「む、無理です・・・」
「いや、まだ最後まで言わせ」
「無理です」