鹿「鹿せんべいよりうめぇwww」

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150黄泉がえり
前回wiki2参照。
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世の中というのはそういうもので、あれだけ騒いだ『黄泉がえり』事件も
一晩たてば西浦市民受け入れられていた。
起きてしまったものはしょうがない。
死人が甦ったからといって人を襲うわけでも無し、
外見は何ら変わりのない普通の人間だ。
奇跡だ天変地異だと騒ぎ立てても、どうせ一般市民にはどうしようもないものだ。
原因など政府が派遣した調査団や特殊チームの類いにまかせ、
市民はただただTVのワイドショーを眺め、噂話しに身を投じるだけだった。

「栄口やけに嬉しそうじゃん。どうしたの?」
朝練が終った後、部室で着替えながら花井が栄口に話しかけた。
「俺の今日の弁当、おふくろが作ってくれたんだ。好きなおかずばっかりらしい。」
「う、お、いいな!」
三橋がよだれを垂らしながらうらやましそうに言う。
「だろ〜もう楽しみでしょうがいよ!早く食べたいな。」
栄口の母親話は正直しつこかったけど、周りはささやかな笑みを浮かべている。
『黄泉がえり』事件以降、周囲には笑顔が増えた。霊的現象に脅えている者もいたが、
大切な者を取り戻した人々の笑顔の方が勝っていた。
そんな暖かな雰囲気が街全体を包んでいた。

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「うっし一球!」
阿部の声がグラウンドに響く。ミットを叩く音がする。投球練習の時間だ。
三橋は構えて一球を投げた―――阿部のミットでパンッと乾いた音がなる。
「二球!」「三球!」
着々と練習をこなす。三橋の心に迷いはない。
いつものようにただ阿部のミットにボールが吸い込まれていく…はずだった。