実況アナ「西浦の三橋君、顔も赤く汗びっしょりです」

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135 ◆1LwXLFUQJA
恋人ができたと三橋がオレに告げてきたのはわりと唐突だった。
高校生活最後の夏が終わり、あとは受験戦争真っ只中という時期。
三年間、部活にばかり明け暮れていたわりには推薦でほぼ進学先が
確定していたオレにとって暇ばかりを持て余してしまう、そんな時期だった。
「こ、恋人ができたんだ」
「はあ? なんだって?」
しっかりと耳を傾けていなかっただけでなく、内容自体がまるで聞き間違えかと思うようなものだったので、思わず変な声をあげてしまう。
「こ、恋人……が、できた」
「……どんなやつ?」
野球部のエースってのは基本的にそれだけでモテるポジションだ。
三橋さえもそれは例外でなく、オレが知るだけでも告ってきたやつの数はそこそこ。
でも三橋は野球を理由に全て断ってきた。
好きな相手でもないのと付き合ったりできないなんつー考えのせいかもしんねえけど。
相手が出来たら真っ先に教えろよと脅迫めいたことを言ったのはまだ一年の頃だった。
三橋は律儀にあの約束を覚えているんだろうか。
変なやつと付き合って大事なエースの投球スタイルを崩されたらたまったもんじゃない。
ついでに三橋みたいなのが付き合うやつってのにも興味があった。
年数を増すごとにバッテリーとしての、恥ずかしい言い方だけど絆みたいなもんも深まったし、報告してくんならオレがきっと一番先なんだろうなという思いはずっとあった。
なのに、肝心のその場を想定していなかった。
「え、と、他校……の、野球部」