俺ら「ナイビッチー!」

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92しょうが焼き・おかわり
;前回嘘予告してすまんかった


六日目。

店の男(上司)から呼び出しをくらう。
三橋には家の留守を頼む。オレの友達が来るから鍵は開けたままでいいと、ただお前は絶対家にいてくれと、念を押して何度も。

「どこ、行く の」
「ちょっとねー、ボイトレ?」
「そ そっか。いってらっしゃ い」

信じるのか、それ。
突っ込まれるよりはマシだけど、最後になる会話にしては味気ないと思った。




(阿部のターン)

「三星学園か……久々に聞いたな」

高校時代の思い出を彷彿とさせる名前との再会は、あまり喜べる形でのものでは無かった。
テレビから流れるニュース。そこの話題の関連として、三星学園の名は挙げられた。それだけなら良かったのだが、アナウンサーの口から溢れるのは汚職疑惑だなんだのと、決して世に誉められた話題ではない。
ひょっとしたら三橋は、このことが原因で姿を消したのだろうか。そんなことを考え、やめる。オレと三橋のことは終った過去だ。今更事実を知ったって、現実にはなんら影響ない。
未練がましく思うのはやめよう。三橋はきっとどこか別の場所で、事件とは無関係にやっている。そう思っておこう。
別の報道を始めたテレビの電源を切る。深追いしなくて正解だ。上手くいくわけなんかない。だからこれでいい、これが正しい選択だった。

無音の空間を裂き、携帯が着信を告げるベルを鳴らしだす。どうせサークルの連中の誰かだろうと、発信者を確認せずにボタンを押した。

『あ、もしもしー。オレだけどさー、元気してたあべぇ?』