三橋「オレ、ガバガバだって、思う?」

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923変態投手 ◆4UgeDk.RLg
阿部は苦々しげな表情を隠そうともせずロッカーの扉を力任せに閉じた。
背後にいる三橋の気配が反応してびくりとするのがわかったが、そこに配慮するほどの余裕は今の阿部には、ない。
そもそもが、だ。
この時点であまり大きいとは言い難い阿部の許容量は既にぱんぱんで、少しなにかの刺激を加えれば破裂してしまいそうなほどだった。
この変態投手が。
小さく心の中だけで呟いて、阿部は覚悟を決めた。
握っていた拳を開き、背後を振り向く。
三橋は不安げな表情のまま、ただ棒のようにしてそこに立っている。
今から「ナニ」をするかなんてその様子からは想像もつかない。
「……はじめっか」
「う、うん……」
投手は変わった人間が多い。
一般的にそう思われているのは間違っていないし、阿部自身も経験からそれが間違いでないことは知っている。
多少のことならやっぱり投手だしな、と認識してしまえば許せる限度も変わってくる。
だが三橋のそれは軽々と常識を飛び越え、変わり者の多い投手、という色メガネをもってしても、明らかに限度を越えていた。
その癖して投手としての能力ときたら相変わらず正確無比なコントロールで阿部を喜ばせたし、扱いが厄介なことがわかっていても手放しがたい存在だった。
阿部が三橋を手放さず、手元に置く為にしっかと覚悟を決めたのはつい昨日のことだった。
――三橋の様子がおかしいことに気付いたのが一月ほど前。
顔触れを思えば珍しくもないオナニーネタの会話の最中、三橋の顔がみるみる青ざめていったのだ。