「オレ、阿部君が…好きだ」
何を期待していたんだろう。
「…ごめん三橋」
伝えられるだけでいいと思ってた。
「お前は俺の大切な投手だ。」
オレが阿部君を好きなのを知っていてもらえればそれでいいと。
「だから…それ以上にもそれ以下にも見られない」
それだけでもう十分満足だと。
「…ごめんな」
それなのにこんなに勝手に傷ついてるなんて、オレはただの大馬鹿者に違いない。
いつからか何も見えない世界にいた。
誰の姿も見えない。
誰の声も聞こえない。
それはいつしか恐怖でもなく悲しみでもなくなってしまった。
オレの姿は誰の瞳にも映らない。
言葉も誰にも届かない。
空虚な世界で一人、雪を見ていた。