三橋「未来で待ってる」

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526オレの投手はツンデレ可愛い

・阿部も三橋も2年設定

その日、副部長の俺はモモカンに呼び出され、来週対戦する敵校のビデオチェックに付き合わされていた。
本当は花井も一緒のはずだったが、用事が出来たらしい。
モモカンと二人っきりのビデオチェックは少し緊張したものの、なんとか無事終了した。
腕時計を見ると午後10時を回っている。かなり遅くなってしまった。
明日も朝から練習だ。部員達はみんなとっくに帰ってしまっている。
人の消えた夜の学校はどこか怖い。 シーンと静まりかえるグラウンドを抜け、チャリを引きながら校門を抜けた所で袖口を誰かに引っ張られた。
「うわっ、なんだお前待ってたの?」
袖口を引っ張って立ちつくしているのはオレと二年間連れ添っている相方、三橋だった。
キュッと強く掴む白い手は、プルプルと震えている。
おそらくこんな暗い所で随分と長い事待っていたのだろう。
バッテリーは疑似夫婦だ。捕手が女房で投手を支える。
1年の時は、まさかそんな関係になれると思って無かったけど、今ではこうして彼女の様に帰りを校門の前で帰りを待っている様になった。
それを思うと自然と顔
がにやける。
オレのにやけた顔を見て、三橋はむっとした顔をした。
「お おそい!」
「んだよ、待ってろなんて言ってないだろバーカ」
からかい半分にそう言うと、三橋はさらにむくれた顔をしてそっぽを向いてしまった。
「ウソだよ。待っててくれてあんがとな」
「べつに 阿部君のために 待ってた訳じゃない」
「じゃあなんでこんな所にいるんだよ」
「………べつ に」
「ふーん、じゃあオレ先帰るわ。お疲れー」
「あっ!」
さっさと自転車にまたがった俺を見て、三橋も慌てて自転車のスタンドを蹴った。