334 :
320:
「俺君、の、ウソツキ…」
淡く色付いた唇を尖らせて、三橋は俺に恨みを込めた口調でそう言った。
「オレ、俺君の為に、恥ずかしいカッコして、ずっと待ってた、んだよ?」
清潔感の有る真っ白のワンピースに、同色のミュール、ツバの大きくて純白のリボンが付いた麦藁帽子。
今日のデートのために、と俺が何日も前から用意して、先日三橋にプレゼントしたものだ。
渡された三橋は始めこそ戸惑いはしたものの、
三橋の色素の薄い肌や髪にはこの格好が絶対似合うとか、
これ着てデートなんかしてくれたら俺すっげぇ嬉しいなとか、
あげく、これ着てくれないと俺持病の発作が起きるんだ…
等と訳の分からない説得をしたかいも有り、渋々受け取ってくれたのだ。
そして今日、三橋は俺の我儘を聞いて、プレゼントに身を包んでいる訳だが、俺は寝坊して、今に至る。
ちなみに待ち合わせは昼前11時。
現在夕方5時。
6時間の大遅刻。
そりゃ真っ白のワンピースも夕日に照らされて軽くオレンジ色にもなるよな…
うぅ…だ、だって、三橋との初デートだと思うと昨夜は興奮しすぎてよく眠れなかったんだよぅ…
「もう、俺君となんか、デートしないから…っ」
「え、ちょ、三橋…」
そ、それは困るぞ!それこそ本当に何かの発作が起きるぞ!
しかし俺が遅刻したのも事実…どうしたものか…
付き合い初めて分かったけど、三橋は相当な頑固者だ。こうと決めたらなかなか譲らない。
野球部の奴らには頑固と言ってもある程度は譲るらしいが、俺の前でだけはそれもない。
それだけ気を許してくれてんだなとは思うし、俺だけが特別なんだって実感して嬉しいんだけど、
ちょっと頑固すぎんだよなぁ…なだめるのも大変だぜ。
いや、俺が怒らす原因作ってんだけど。
三橋はこの暑い中、ずっと待っててくれてたんだもんな。
そりゃ怒るしそう簡単には許してはくれないよな…
俺が逆の立場なら三橋が許してっつっても一晩中鳴かしてるだろうしなあ…
そう思うと、呆れて帰らずに待っててくれただけでも凄いことなんだよな。
汗だっていっぱいかいただろうし…
…しかし…
335 :
320:2008/07/31(木) 19:29:01
「…?何、俺、君?」
しっとりと汗ばんだ首筋。
桜色に染まった頬。
白いワンピースからすらりと伸びる手足。
うっすらと涙ぐんだ大きな瞳。
きゅっと尖った唇。
これは、可愛すぎじゃね?むしろ、えろくね?
つーか、誘ってるように見えるんだけど!
「!俺君!何で笑ってるんだ、よ!」
よからぬことを考えてたのが顔に出たらしい。
三橋は更に頬を膨らませて俺を責めた。
「ごめんごめん」
「むぅ…」
素直に謝られるとどうしていいのか分からないのか、潤んだ瞳が泳ぐ。
いつもの笑顔もいいけど、怒ったとこも、困ったとこも愛しい。
なんて言ったらまた怒られるかな。
とりあえず、これから一緒にスーパーでも行って、
俺ん家で三橋の好きなでっかい人参の入ったカレーでも作ってご機嫌を伺おうかね。
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