>>213 ここまで
【12】
翌朝、月曜日早朝。
「お、はよう、沖君!」
羞恥心を捨てた沖は、入浴中に風呂の外に家族が立つわ、祖母の部屋で寝ると言ったら小さい時以来と喜んで姉もついてくるわで、賑やかな夜を過ごした。
祖母の具合も快方に向かっており、よかったと思いつつ無事に登校する。
朝練は落ち着くまで中止になっているが、例の図形を書いた板や紙がないか捜索するため、一同は6時に集合した。
捜索前に、実行されていると思われる呪術の術式の調査結果を擦り合わせる。
「図形が完成に近づくたびに呪いの力が増幅されていく、か」
「生贄が多くなるほど術者の心身に負荷がかかるため、呼び出すもの(悪鬼など)に喰われない強い精神力が必要…」
呪いの存在を認めざるを得ない状況でも、これらの内容どれにも現実味を感じず、真剣に検討せよというのには無理がある。
「体がもたなければ病に冒され、心を喰われれば理性を失い欲望のままに振舞う…って、これじゃ絶対バレるんじゃね?」
各自可能な限り検索してみたものの、用いる道具の隠し場所を絞れるような情報はなかった。
特別教室等に入れない時間は、応援団の二人と篠岡がグラウンドや野球部倉庫、沖と西広と阿部が1年3組を見た。
阿部は、犯人と動機について本当に自分の考えが正しいのかと悩むことをやめたが、一応三橋と浜田に1年9組の捜索を頼んだ。
特別教室のある棟が開いてからは、ターゲットに近い場所という観点から自分達が週に2度以上使う場所も少しずつ手をつけたが、何も見つからない。
そうこうするうちに、生徒の大半が登校してきた。
「昼休み集合な、それまで教室と授業で使う場所を探しとこう」
ホームルーム開始10分前、おのおのが自教室に引き上げる中、阿部は戻らなかった。
その足は真っ直ぐ2年9組へ向かっていた。