スネ毛スレに間に合わなかった
保管はどっちでもいいです、よー
阿部視点
「阿部くん、って ぱ、パイパン…」
突然の三橋の発言に俺は動けない。驚くっていうより、発した言葉の意味が分からなくて、オレはひとまず数学の例題を解いてから三橋を正面から見た。
オレの部屋で、隣で簡単な二次方程式を何問も解いていた三橋は指が疲れたのか、シャーペンを転がして自分の指を揉んでいる。
「パイパン、ってなんだ?」
「わ、わかん ない。けど、ハマちゃんが、言ってた」
「ちょっと待て。俺の記憶が確かならパイパンってのは下の毛がつるつるって意味なんだが」
「わ、わかんない、でも、ハマちゃんが、見たって言う んだ」
そういや一週間くらい前に浜田とトイレでばったり会ったことを思い出した。そん時に並んでションベンをしたときにやたら驚いていたことも思い出す。
あの時はてっきりオレのデカマラに対する尊敬と畏怖の眼差しかと思っていたが、そこじゃなかったのか。
一週間前は、まだ剃って二日も経っていなかった。剃った跡の生え始めが痒くて痒くて、ひえピタを貼ってみたりしたが、結局どうしたって痒いことに気が付いたオレは一応女子のいない場所で股間を掻きまくった。
昨日あたりから痒みは収まって、ブツブツしていた皮膚は平らになり、チン毛も3センチくらいに生えそろってきたところだ。
パイパンっつーのは最初っから生えていねえことを言うんじゃないのか。知らんけど。
「あー、アレだ。オレが全身のムダ毛剃った日あるだろ?あれの次の日くらいの話だよ。あんましパイパンとか言うなよ。いい意味の言葉じゃねえんだから」
「そう、なのか」
「そう。女が聞いたらドン引きされるぞ」
「ぱいぱん…っていうのは、つるつるって、意味?」
「主に下の毛がな」
「お、おおお…」
赤くなった三橋は目をぎゅうっと瞑って拳を膝の上で固める。そしてゆっくりと目を開いて横目でオレをチラ見した。
「あ、あのとき、阿部くんが 剃った、とき…。オレ、ほんとに死ぬほど驚いて、そんで、胸がぎゅうううって痛くなって、それから、泣きそうになった、んだ」
こいつのムダ毛に対する執着心は1番に対するそれと変わらないくらい強い。むしろ野球よりも一生かかわってくる問題かもしれない。
こいつの婚約者とやらから奪ってしまう形になったわけだが、これを背負うことに少しの不安がよぎる。正直重い。重すぎる。
「よかった」
三橋はそろそろと手を伸ばしてきて、俺の腕に触る。生え始めの腕毛に指を這わせて、何度も往復する。その触り方はどこか性的でオレはチンピクするのを抑えるのに必死だった。