初めてみる少年の投球に、目が離せない。
打たれないだろうか。アウトは取れるのか。
青年は息をするのも忘れてしまいそうになる。
スリーアウトを取り、少年がマウンドを降りる、その時だった。
雨が、降り出した。
(駄目だ。駄目だ。駄目だ)
湧き上がる思いを、消すことができない。
自然と速くなる鼓動の音が、やけに身体中に響く。
少年に会いたい。間近で試合を見たい。
思いが強くなるほど、それに共鳴するように、雨も強くなる。
ずっと昔からそうだった。
この街に来た時もそうだ。
淡い期待を抱いたその時、電車の窓を雨の雫が叩いた。
青年は、テレビの電源ボタンに手をかける。
指先が震える。
見たい。見てはいけない。見たい。見てはいけない。その葛藤の繰り返し。
屋根のない球場に、雨は禁物なのだ。
このまま酷くなれば、中止になりかねない。
相手は、強豪だと、少年は言っていた。
勝ってほしい。だから、雨をこれ以上、降らせてはいけない。
青年は、ボタンを押した。