三橋「シュポー!」

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112社内恋愛F ◆tsHa4eznaI
※これまでの流れとか特にないけど、一応社内恋愛の続きというかラスト

現在の室温26.7℃


保守作業は順調に終わり、午後は比較的まったりとした時間を過ごしていた。
シュンに出した課題の採点をしたり、三橋が行き詰ったコーディングを直してやったり…
ありふれた日常、ありふれた午後の風景。
そんなありふれた毎日が、いつまでも続くと思っていた。

「阿部君、サーバー室の配線足掛けそうで怖いから結束バンドでまとめといてくれる?」
林さんに言われて、俺は一人サーバー室へと向かう。
途中トイレから出てきた三橋とすれ違ったけど、あえて声をかけなかった。
たいした仕事じゃない。いや、本当はそんな理由じゃない。
入社以来何をするにも一緒にこなしてきた俺たちだったけれど、
いつの間にか少しずつ歩む道がズレてきているのを感じていた。


「よしっ。次はあっちか…」
パネル式のマットからはみ出た配線は、蛇のように溢れて絡まっていた。
一年前はもっと整然としていたように思う。
いつの間にか過ぎ去った時間を思い、らしくもなく感傷的な気分に浸る。
アイツと一緒に入社して2年とちょっと。本当にいろいろなことがあったと思う。

コードを何本か取りまとめて、大中小と長さが違う結束バンドで固定していく。
作業自体は単純だ。シュンにでもやらせればよかったかもしれない。
けれど、こういう作業を一人でやるのは久しぶりで、なんだか少し新鮮だった。
久しぶり? いや、初めてかもしれない。こんな時いつも隣にはアイツがいた。
寂しい? いや、ホッとしている? …わからない。