子三橋「ミーハミーハミハ♪」

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907碧い鎖 ◆r2YHExa9lY
>>893 ここまで
携帯で名前を呼び続け、居間の電話から巣山の自宅の番号に繋ぐ。
携帯電話と普通の電話の子機、二つを左右の耳に当てる西広を見て、母親は呆気にとられた。
「夜分失礼します、僕は西浦高校野球部の…」
受話器を取った巣山の母に、いま携帯電話で通話中ですが巣山くんの様子がおかしくなって、と的確に話す。
話の中に救急車とか病院といった単語が出てきた後、しばらくして通話は終わった。
下りてきていた幼い娘が、緊迫した空気を感じ取って泣き顔になる。今日、一家の主は出張でいない。
母はどこへでも自転車で向かおうとする年齢の息子を引き留め、往復のタクシー代を握らせた。


友人のひとまずの無事を確認し、監督に連絡を入れて帰るやいなや、西広はメモと向かい合った。
行きのタクシーで心に余裕などなかった分、今になって巣山の残した言葉にどうしても気になる点がある。

線が三本、また一本
よにんめ、よんほん

刻まれた線ならば、巣山は「6本」のはずだ。
4人目の生贄ということならば何故、本数の単位でも言うのだろう。
「線、図形、印…陰陽道」
呪術と線について片っ端から検索してみるも、あまりピンとこない。
「でも死人にこんな力、あるのか?」
超常現象的に付けられた青い傷はまだしも、手書き文字まで入ったあんなプリントを作って三橋の机に忍ばせるような行動が、幽霊などというおぼろげな存在に果たせるのか。
三橋を精神的に追い詰めてるとしか思えない、阿部はそう言った。
まさにそういう部分に生々しさがありすぎて、西広にはどうしても心霊現象のイメージから遠いように思われるのだ。
仮に死んでなおそれほどの力を持つのなら、迷惑なことではあるが、彼はじっと三橋を見ていた期間にもっと積極的になれたのではないか。
死者が呪い恨み殺しに来るというのは凄く恐ろしいだけに、囚われてはいけないと考える。
危険に晒される者達の一番身近にいて、特に冷静にならねばならない。
ちっぽけな疎外感など、当事者達にしてみればどれほど贅沢な悩みだろう。