阿部「いただき ます!」

このエントリーをはてなブックマークに追加
761怠惰の雨音
青年は、ゆっくりと立ち上がる。
後悔したり悩むのは止そう。
これで良かったのだと思わなければ、少年に対しても失礼だ。
奥に行き、煙草を探す。
「…………ハハッ、一本も入ってねぇや」
空の箱を握り潰して、ゴミ箱に放る。
煙草の箱は、ゴミ箱の縁に当たって、床に落ちた。

曇り空。
どんよりとして、肌がべたつく。
青年は、珍しく午前中に目を覚ました。
窓から覗く空模様に、青年は小さく溜息をつく。
クーラーのない蒸し暑い部屋で、扇風機に当たりながら、僅かな涼しさを感じる。
テレビをつけても、やっているのは情報番組や散歩番組、時代劇の再放送だった。
試しに、地元のU局にチャンネルを変えてみる。
そこに映ったのは、青年が見てはいけないもの。
否、見なくては、いけないもの。
歓声。応援歌。
そして、少年が投げている、姿。
暑さなど忘れて、画面を食い入るように観る。
立ち切ったと思った少年に対する感情は、いとも簡単蘇ってしまうのだった。