>>96 ここまで
「阿部、西広、ちょっと」
巣山が、特に三橋と沖から遠い位置で呼んだ。三橋は目が赤いだけで思ったほど酷くないが、今日の沖の顔色は見ていて痛々しい。
栄口は、三橋と沖に飲み物について話しかけ、二人を連れて店内へ再び入っていった。田島も後に続く。
閉まった自動ドアをちらりと見て、巣山は静かに言った。
「もし次が俺だったら、三橋と最後までいてやれるのは、多分お前らだ」
言い出す者はいなかったが、恐らく全員がその順番に気づいていた。
スコアボードで、それぞれの名前の上に書かれる数字は背番号。9、8、7が順に離脱し、彼らは今この場所にいない。
「泉は、なんか伝えようとしたんだと思う」
指の形に土がついていた、泉の携帯電話を思い出す。
「だからお前ら、今晩ずっと、すぐ携帯出られるようにしといてくれねーか」
どうやって、呪詛がやってくるのか。ヒントさえあれば、少しでも解決が早まるかもしれない。
自分に降りかかる災厄への恐怖はもちろんある。
しかし、このまま本当に一人ずついなくなった時、最後に殺すと宣告された者の精神状態を考えると、胸が苦しい。
三橋に廻る前に、この不条理なカウントダウンを止める。
恐怖よりも、怒りが大きく先に立つ。
「田島?どうした」
ガゴンと音がし、田島が自動ドアをこじ開ける勢いで走ってきた。表情が険しい。
「浜田から…メール」
------------------------------
from:浜田
sub:無題
見舞い来たら、水谷も倒れたって聞いた
大丈夫か、なんかオレにできることあったら言えよ!
泉に聞かれてたあいつのことわかった
引っ越してすぐ事故で死んだって
------------------------------