三橋「な、何でハルヒのコス して捕まらないんだ?」
お湯をいっぱい浴びているうちに気分だけは落ち着いてきた。
落ち着いたというよりも、ずどんと落ちていった場所に馴染んでしまったみたいな、今までとは違う気分だった。
お腹から腰のあたりを擦ってみる。
赤い跡、手の形、だ。
これ、いつ消えるんだろう。
早く消えてほしい。
汚れを起こすみたいにお湯をかけながら擦って擦って擦り続けていると皮膚全体が赤くなって、手の形がわからなくなる。
でもこんなふうにして、真っ赤になったの、阿部君に見られたら。
阿部君に、見られたら。
どうなって、しまうんだ、オレは。
阿部君がいなくなったら、オレはどうすればいいかわからない。
三年間、ずっと一緒で、これからだってずっと一緒がよくて、たくさん、たくさん悩んだ。
進学先はほんとは群馬の大学にしなさいってじいちゃんに言われてた。
行きたい大学があるのかって聞かれてもわかんなかったけど、阿部君と一緒が良かったから、自分が思うように選んだ。
反対されて、でも一緒にいたい人がいるからなんて言えるわけなくて、口下手なのに、頑張って、最後は許してもらえた。
そのかわり野球じゃなくて勉強に集中しなさいって言われて、けど、阿部君といればそれは自然とついてくるものだったから、説得して、またオレと一緒にバッテリー組んでもらうんだって。
思ってたのに。
頭の中に、汚いものを見るような目でオレを睨む阿部君が浮かんだ。
絶対、知られないようにしなくちゃ。