三橋「あべくん おっきくなった!」

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746白雪姫ごっこ ◆rsyjg5KHN2
彼は朝起きるとまず一番最初に俺に挨拶する。そして俺の服を優しく脱がせて、濡れたタオルで
きれいに体を拭く。そして新しい服を選び、俺に着せる。服を着替えさせ終わったら櫛で俺のく
すんだ茶髪を綺麗に梳かして整える。
そして彼は、仕上げに彼好みの香水を吹きかけ、優しく抱きしめて口付けをする。

俺はかつてはノラ夫人であった。しかし彼女と違って飛び立ちはしても貧弱であった俺は鳥籠に
連れ戻され、羽を毟られたのだった。
そうして俺はシフォンの人形に逆戻りし、彼の目を楽しませるばかりの毎日を過ごしている。

俺がかつて飛び回った空を見ることが出来る場所は、常に彼と一緒でなければ立ち入ることが出
来ない。俺がボールを投げ、皆と笑いあい、そして優しかった彼が居たのはもはや昔の話である
。あの時の俺は彼の人形で居ることに喜びすら感じていたものだった。そして彼もそんな俺を愛
していた。
俺はその空が見える部屋で彼と日が沈むまで一緒に居る。彼が読んだ本、テレビで見た事、いろ
いろな事を話しかける。

夕日が沈むと彼は俺の体を拭き、寝巻きに着替えさせ、香水を吹きかけてベッドに横たわらせる
。そして頬に口づけをして頭を撫で、お休みの挨拶をして彼は自室へと戻っていく。
そして朝日が昇るとまた彼は俺におはようの挨拶をして、綺麗な服に着替えさせるのだ。


俺の夕日は沈んだままだというのに。