少年へ伸ばそうとしていていた手が、凍りついたように固まる。
自分は、逃げてきた。
人と関わるのを避け、誰かと接するのを拒絶してきた。
少年にも、同じ思いをさせてはいけない。
一緒にいれば、いずれは互いに依存しすぎて、共倒れになってしまう。
少年の未来を壊す権利は、自分にはない。
青年は、その手を戻す。
「…………もう、ここには来るな」
「う、え……?」
「こっ、ここには来るなって、言ってんだよ!」
普段叫んだりしないせいか、声が震える。
言ったらどうなるかも、わかっている。
突然のことにきょとんとしていた少年も、次第に顔を曇らせていく。
「なんで……?」
「これまでは、お前は嫌なことがあったら、ここにくるだけだった」
手が汗ばんでいる。
急に声を荒げたせいか、体が熱くて仕方がない。
「なのに、今はそれもなしに来ちまってる」
「だって、それは……」
「こんなとこ来ちゃ駄目なんだよ。お前は、俺みたいになっちゃいけない」
「いや、だ! オレ、好きだから、もっといっぱい一緒にいた、い!!」
少年が反論する。
せっかく、思いが叶ったというのに。
少年は、青年の変わりように、困惑していた。