俺は野球部員。今年から西浦高校に通っている。ここの野球部はできたばっかで、先輩は2年が10人だけいて3年はいない。
練習はすげーハードで真面目だけど、先輩達は下ネタとかもたまに言うし、いい人たちだ。
でも1人だけ、冗談言ってるのを聞いたことがない人がいる。投手の三橋さんだ。9分割とかすげー技持ってるのに、内気な感じでよく泣く。
だから俺らは、絶対三橋さんにだけはうかつなことが言えない。変なこと言ったら、絶対あの人泣く。それで阿部さんに殺される。
「うぉ、ソレ次こっち貸して!」
ある日、部室で俺らがこっそりまわしてたエロDVDが見つかってしまった。正直、相手が田島さんでよかった。花井主将とか阿部さんだったら部室でやるなって間違いなく怒られる。
「あの、監督とか他の人にはどうか内緒で頼んます」
「んー、どーしよっかなぁ」
ええっマジすか、ちょ、ふじこ。田島さんは面白がっている。しかもこれ借りる気満々だ。
「たじま、くん!あの ね」
そこに、いきなり三橋さんが入ってきた。うわ、もしかして終わった…?けどこの人、あんまり言いつけたりとかしなさそうだ。
「あー、三橋にもバレちったな。じゃ口止め料2人分で2枚貸してもらおっか」
「う…わかりました、黙ってて下さいよ。絶対っすよ!」
三橋さんはボケッとしていた。多分わかってないんだろう、セーフ!
「三橋、豪華2本立て見してやっからオレんち来い。今トリヒキが成立したぞ!」
「とっ、トリ ヒキ…?」
トリみたいな顔して首をかしげている。そして衝撃的瞬間がやってきた。
「お お!え、ええと、い、いちご屋、お主も悪よ、のー」
つ、ツッコミてぇーー!!初めて聞いた三橋さんの冗談、だが間違ってる!間違ってますよ!
「三橋さん、えちごやです」
その時、時代劇オタの中村が発言した。こいつ普段おとなしいくせに時代劇ネタになるととんだKYだ。泣くぞ、三橋さん泣くぞ!
「バッカ、何だよエチゴヤって。いちご売りのいちご屋だろ!」
田島さんがそう言って、三橋さんはこくこく頷いた。中村は悲しげな目で俺らを振り返った。ごめん中村、庇えない。
「で、ですよねー!い、いちご屋だよ中村!」
「そうそう、いちご屋に決まってんだろ!昔イチゴ売ってたのは悪いヤツなんだよ、知っとけよ!」
中村は部室を飛び出していった。
「い、いじめ ちゃ、ダメ!です、よー!」
三橋さんは中村を追いかけていった。何だよいじめちゃダメって、あんたのせいだろが。
「なんかごめん、でも中村もひとつ賢くなってよかったよな!後でオレ、フォローしとくから!」
田島さんは爽やかに部室を出て行った。そして元凶はあんただ絶対。
こうして俺らは毎日、練習以外でも結構疲れている。ストロベリー(笑)