>>50 渋々、頷いた。親方め、何かあった時の責任は押し付けてやるからな。
「じゃーうちの店に運んで下さい」
愛玩人工房は人体を扱うので、ちょっと診療所よりも立派な医療設備を持っている。
んでもって俺も愛玩人相手にちょっとした手術や施術、治療だったら出来る。
そして、愛玩人と人間は肉体的には同じ物だから、愛玩人相手の技術を転用できるんだよね。
だから、時々こういう依頼が来るけど、俺、人間相手の免許は持ってないんだって。
まあこんな場合は緊急処置って事で、お咎めは無いだろうけどさあ。
すぐに他の店で使われてる男性型愛玩人が数人寄ってきて、その少年を抱え上げる。うん、やっぱり少年だった。レンと同じような年かな。
「この子の家族に連絡取っておいてねー」
現場の近くにいたオジサンが、エアボードを見てる。
「田島悠一郎だってえ」
ふーんと頭の片隅にその名前をメモして、俺達は工房へ戻る。
「そ、その子っ死ぬの?」
工房内に入るなり、レンが興奮して声を掛けてきた。
「さあどうだろ」
見た感じは頭の怪我だけっぽいけど、頭はヤバいからな。
俺の指示の元、田島少年は服を脱がされる。
おやおや、結構な一物をお持ちですね。って言うのは、今は関係ないか。
ざっと視認して、汚れを拭わせ、田島少年の体はメンテナンスマシンにセットされる。
閉まった機械の内部にナノマシンの入ったジェルが注入される。
それと同時に体内をスキャンしていく。
「だいじょぶ?」
「まだ判んねーよ」
簡単なバグ……じゃないや怪我はナノマシンが治療していく。
ま、マシンが動き出したら暫く機械任せだ。
手伝ってくれた他所の愛玩人達に帰ってもらい、ちょうどお茶の時間だったので、俺はうちの愛玩人達とお茶にすることにした。
ちなみに、親方とチヨはまだ帰って来ていない。
親方、何してんすか。
甘いお茶と焼き菓子を摘みながら、俺は溜め息を吐いた。