>>536 ここまで
志賀と連絡が繋がり、容態を聞くと、泉も花井と同じく意識が戻らないが、苦しんでいる様子はないという。
練習を始めはしたが、柔軟運動中、部員達の動きは明らかに精彩を欠いていた。
元気だったチームメイトが突然二人も倒れたショックは大きかろう、現に、花井と泉が自分も心配で仕方ないが、彼らにとってこうも打撃が激しいものか。
百枝は、仲間の安否を気遣うことはまったく悪くないと思う反面、何か別の理由がある気がして言い知れぬ不安に襲われた。
「よし、自分で集中できてないと思う人は、今日はランニングしてあがろっか。怪我しちゃうからね」
返事も出ず、一様に下を向く。
「あの、おっ オ オレ、花井くんっ と、泉く…」
落ち着きなく指を動かしながら、珍しく三橋が沈黙を破った。
「三橋、見舞い行きたいの?」
田島の言葉に、首をがくがくと縦に振る。
うん、いいかもと、百枝は頷いた。
「OKがもらえたら行ってきなさい。それで、みんなと私に教えて」
「はっ、はいっ」
「オレも行きます!三橋、ランニング行くぞ!」
一礼して外周へ向かう田島に、三橋が急いでついて行く。その後ろを、同じく頭を下げた水谷が待ってよと追いかけた。
片足が動きかけた沖は、阿部と目が合って止まった。やるか、という声に大きく頷く。
第二のバッテリーと、栄口、巣山、西広がグラブを持ち、グラウンドへ散った。