オレの選んだ服はわんぴーす? って阿部君が言ってた、上と下一緒くたですぽって被れちゃう形の。
だから昨日のと違って着やすいぞ、と思ったのに、後ろのファスナーがうまくとめられなかった。
オレ、体は柔らかいほうだから手はちゃんと回るんだけど角度が悪いのか、全然あがらない。
仕方ないから阿部君に閉めてもらおうとしたら肩胛骨のあたり、かな、そのへん。
ちゅうって音をたてて吸われてぶわわって産毛が逆立った。
ファスナーはちゃんと閉まった、けど不意打ちはやっぱりびっくりする。
「海までまた歩くんだけどさ、お前あの靴で平気か?」
「う……ど、どんくらい……?」
「昨日旅館まで歩いたのよりかは長いな、多分。オレも初めてだからはっきりはわかんねぇんだけど」
無言になってオレは下を向いて考え込んだ。
女の子の、ちゃんとしたカッコするなら汚れたスニーカーじゃちょっと変。
バスの中で阿部君に履き替えさせられた靴は女の子用の、紐の細いサンダル。
ヒールはなくてぺたんこだし、サイズもぴったりへーきだけど履きにくいし、歩きにくい。
あんまりあれ履いていっぱい歩くとこは想像したくない、ぞ。
オレの考えを読んだのか、阿部君が頬を掴んでオレの顔をあげさせて、こう言った。
「足、痛くなりそーか?」
「う、ううんっ」