続・邪鬼編
「…なんてこと も、あった ね」
高校生の頃と変わらぬ無垢な笑顔を浮かべて、三橋さんがフヒッと笑う。
「あ〜〜〜やめて、マジでやめてくださいそーいうの!!!」
「へぶっ」
たまらず投げつけたクッションは見事に顔面に直撃した。
慌てて顔を覗き見るも、緩んだ頬はそのままに、鼻の頭を赤くして笑っている。
「あの頃は若かったんですよ…」
きっと今物凄く顔赤い。
当たり前だ。誰だって消し去りたい過去のひとつやふたつ抱えている。
「じゃき、さんっ フヒヒ」
「三橋さん!そろそろ怒りますよ!」
年も食って前より大分図太くなった三橋さんは、同ぜずウヒウヒと笑っている。
「もーマジでやめて…」
「う、ん でも、俺ね 結構スキ、だった から」
「へ?」
「シュン君 いつも、優しい から。だから ね、その…たま、には、いじわるで も…」
そう言ったきり下を向く。
今度は三橋さんが赤くなる番だった。
「何ですか?最後まで言ってくれないとわかんないです」
「う…え、と…」
「三橋さん」
「そ、れ…やだ」
「え?」
「呼び捨て で、いい よ」