青年は、賭けてみることにした。
今日、少年が部屋を訪ねてきたら、もう思いの丈をぶつけてしまおう。
それで、引かれて、諦めをつける。
少年が来ても、来なくても、これなら吹っ切れることができる。
少年が来る確率すら低い、負けしかないだけの賭け。
しかし、その賭けが、好転していく。
「オレ、です……」
ドアを叩いた後、声がした。
驚いて、青年は飛び上がる。
急いで玄関に向かい、ドアを開いた。
そこには、やはり少年がいて、青年は驚いた表情のまま固まってしまう。
「ど、どうした?とにかく入れよ……」
動揺したまま、少年を通す。
少年は俯いて、何か思い悩んでいる様子だった。
チラチラと青年を見てくる。
「……なんだ?」
青年は軽く笑って、少年にそう尋ねた。
最初こそ、予期せぬ来訪で慌てはしたが、もう心の整理はついている。
少年は恐らく、青年に別れを告げに来たのだろう。
青年はそう確信して、真っ直ぐな視線で少年を見た。
少年はゆっくりと口を開く。
「す、好き……です」