遂に俺と三橋は敵中に落ちた。
銃で作られた鋼の包囲網。腕の中で震える三橋をきつく抱き締め、俺は眼光で刺し殺すように敵勢を睨みつける。
俺たちが蜂の巣にならないでいるのは、直ぐ死なせるわけにはいかないからだ。
包囲網の一角が割れて、黒ずくめの眼鏡が現れる。その痩せぎすの鉄火面、忘れようとしても思い出せない。
「お前が頭目か、ショタスキー。しみったれた身分だな」
「旧友に対してずいぶんな口の聞きようだ。オレクセイ・ミハシノフ」
俺とショタスキーの険悪な経緯は省く。
「オレクセイ。例のマイクロフィルムを寄越せ。そうすれば昔のよしみで見逃してやろう」
「今時、B級映画の悪役でもそんな台詞はお断りだぜ」
「拷問のプロフェッショナルに任せてもいいんだぞ。お前はともかく、そちらの坊っちゃんは耐えられるかな」
言葉の意味はわからなくとも、冷たい敵意は伝わる。三橋の震えが激しくなった。
「オレさん」
「心配するな。俺の命にかえてもお前は守る……ショタスキー、取引だ。マイクロフィルムを渡す」
「賢明だな。では早速見せてもらおうか」
俺は三橋の背後に回り、優しく両肩を抱き締めると「紀信流脱がせ術」を仕掛けた。
瞬時にして、一糸纏わぬ三橋の体が露わになる。
ちょいとやせっぽちな真っ白い裸身にピンクの乳首、こぶりなチンコがお披露目されるなり、周囲に化学反応がおきる。
「コミンテルン!」
「ソフホーズ!」
「ボリシェヴィキ!」
敵は一斉に股間を抑えてうずくまる。それは鉄火面のショタスキーも例外ではない。
「くっ、まさかこのような手段に訴えるとは」
「出世のために知恵を磨いたはいいが、心の修練をサボったようだな、ショタスキー」
膝をついたショタスキーの傍にかがみこみ、俺は余裕綽々の笑みを浮かべる。
「望むなら三橋の小便でも浴びせてやろうか。ショタ好きでスカトロ好きなお前のことだ。嬉しさの余り気絶だな」
この極寒の地で気を失えば、眼を覚ました時には天国だ。ショタスキーの顔面が蒼白になる。
「二度と俺たちを追うな。次はないぞ」
三橋がいそいそと服を気負えるのを確認し、俺たちは注意深くその場を立ち去った。
「トロイカ!」
「バラライカ!」
「ペレストロイカ!」
ちんちんおっきして身動きできない男たちの悲痛な声が響き渡る。(気が向いたらつづく)