三橋、そんな顔してどうしたんだ。
俺、頑張ってこの鯛の塩釜焼きを運んできたんだぞ。
「オレ……爺ちゃんのこれ、あんまり好きじゃな、い」
「え…………」
「これ、しょっぱすぎて……オレこっちに来てもう食べなくていいって、思ってたのに」
三橋の言葉が、俺に突き刺さる。
雨で濡れた重い体が、余計に重くなった気がした。
バスケットを握る手も、力が抜ける。
床に落ちたバスケットの中の皿が、音を立てた。
「魔法使い、さん……?」
三橋にきっと、悪気はないんだろう。
だから、凄い困った顔をしている。
金は貰ったし、届けたから、これでいいのかもしれない。
三橋の反応にがっかりするのは、俺じゃないはずなんだ。