アフロ「息子をキズモノにするやつは許さん」

>>238おやすみはし。
次に培養房のランニングコスト。
それから、元からある遺伝子をオーダーメイドの細かい注文に答えて改変する費用。
だから、大量生産できるところなんかは、かなり安く出来る。
業界最大手の西広コーポレーションなんかはその最も足るもんだろう。
あそこはニシヒロ型オンリーでクセのない顔、中肉中背、どこにいても邪魔にならない存在感、基礎的な知能が高く、手先も器用で体力もあると言う、大変便利な一品だ。
家庭での家事や雑事に子守、レストランなんかの裏方ではニシヒロ型のシェアが物凄い事になっている。
水谷さんの所でもニシヒロ型、見るしなあと、俺は先月、うちにメンテナンスに来た大口の顧客の愛玩人達の顔を思い出す。
まあそこまでいくと、『愛玩』人と言うより、『使役』人だろうが、あんまり区別してる人もいないんだよな。
『愛玩人』って単語自体、俗語みたいなもんだし。
正式名称は人型高知能遺伝子改変生物。
更に家庭用とか商業用、工業用に軍事用とかが付いていくんだがな。
たまにもっと良い愛称がなかったのかと思うものの、愛玩人の正式名称はどうでもいいや。
で、なんやかんや言っても、愛玩人は毎日顔を突き合わせて暮らしていく、更には寝室まで共にするとなる。
すると、金額の大小よりも自分の好みを優先する人も多い。
だから、うちみたいな零細企業でも細々とでも食ってけるわけである。
今日の愛玩人展覧会なんてまさに零細企業の祭典。
全国各地から、有名無名と言うか、無名無名の工房が集う。
その分、バラエティに富んでいて面白いんだよなあ。
と、俺はなんやかや話しかけてくるレンを無視して、会場時間までカタログを見るのに没頭する。


開場してすぐに、4人が予約済みになる。うん、良い調子だ。
14人中10人を表に出している。
皆、お揃いのTシャツに女子はミニスカ、男子は短パンだ。
モモエ型男女とミハシ型の男女の一人ずつは最終日に逆オークションに掛ける。
定価から初めて段々金額が下がっていき、最初に値段を付けた人が落札って仕組みだ。
工房としては勘弁して欲しいことだが、中には半額以下になる事もある。
お祭り騒ぎだから仕方ないし、親方が納得してるんだから、それでいいんだけどね。
いつもは接客なんて俺に任せっぱなしの親方も、今日だけはにこやかに、お客様の他愛ない質問にも答えている。