胸くそ悪いことがあった。
パラレルワールドのネットに繋がったとかいう前置きで、オレらが架空の人物として存在する世界での、オレらのキャラ付けみたいなものを紙に書かれて貼られた。
書いてある内容にもみんな相当頭にきていたが、何よりムカつくのは、それをネタにして三橋にちょっかいを出し、さらに助けに入った西広とまとめて拉致った奴らだ。
2人は地震をきっかけに逃げ、殴られた傷は1日練習を休んだ程度でほっとしたが、ケガの大きさの問題じゃない。
じゃあ地震がなかったら、あいつらはどうなってたんだ。
拉致現場を見た水谷の通報に、不確定要素が多いとか言ったらしい警察にもイラッときた。
浜田がヤンキーの溜まり場のひとつを指定して、一か八か「入っていくのを見た」と嘘ついてくれたおかげで、そいつらはパクられたらしい。飲酒喫煙と傷害で、停学になっている。
三橋は気が弱いから心配だったが、昨日早くも復帰した時は思ったほど悪い状態ではなく、たぶん西広がフォローしたんだと思う。
花井さえも怒りまくってるから、オレはできるだけ冷静でいようとしている。
でもムカつくもんはムカつく。
練習後、みんなでいつものようにコンビニに寄った時、出口でもう1回入ろうとしてきた三橋と軽くぶつかった。
「うごっ」
「おー、ごめん」
そんなにしたらコロッと取れんだろってほど首を振った後、三橋はぼやっとオレの顔を見上げた。
「どーした、どっか痛くしたか」
「う、ううんっ、あの」
出入り口じゃ邪魔なので、とりあえず中に入ってコピー機の前に立つ。
「す、巣山くん、は、おっきい ね」
「そーか、大したことねーだろ」
「オ、オレも、もっと、おっきかったら…」
そう言って、三橋はしゅんと下を向いた。そういや前、身長と速い球がどうとか阿部が言ってたな。
小銭を握り締めてる三橋に、早く買っちゃいなと声をかける。買い忘れは、ああ、チロルチョコか。