>>713 エロ無し
スイスイと飛び回るとんぼに気を取られ、おれもなんとなく庭を見ていると三橋が話し出した。
「…阿部君と同じ大学に入れたけど、オレからは言えなかった…。学部が違っても、共通の科
目とかあって、大きな講堂でバッタリ会った…阿部君、すごく驚いてた」
そりゃそうだろうなとおれは頷いた。
「講義が終わってから、話 した。オレ、ぼーっとしてて、あんまり覚えてない…ごめんな、
とか 下宿に戻ってこいとか、なんかいろいろ 言われた、ような気がする」
「そういえば、今は違うところに住んでるんだよな?」
「うん…大学の方は、おじいちゃんにも 許してもらえたんだけど、あの下宿は絶対ダメだっ
て、譲らないんだ」
「ふーん、お前ってさ、いいトコの子なんだろ?言っちゃ悪いけど、あそこボロいから心配な
んだよ、きっと」
「でも、ホントは戻りたかったんだ…」
三橋は枝豆を取って口に持っていき、指で莢を押した。
「…あ」
つるん、と飛び出た豆が口を掠めてぽとりと地面に落ちる。
「も、もったいない…」
「三橋って、器用なのか不器用なのかわかんないよな」
野球での三橋のポジションはピッチャーだ。
去年の秋、阿部に焚き付けられて野球部のOB対現役で試合をしたんだけど、三橋はストライ
クゾーン9分割というありえないワザを披露してくれた。
以来おれは三橋に一目も二目も置いている。
ここまで