阿部「お前なんかちっさくなってね?」

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916俺の宅急便
俺はそのまま、家庭科室のドアを開いた。
理事長らしき人が、こちらを向く。
「魔法使いです」と、軽く会釈すると、その人も少しだけ頭を下げた。
ゆっくりと近付いて、何を作っているのか覗く。
魚の塩釜焼き。なんの魚かは、わからない。
尋ねると、鯛だという。
唯一作れる得意料理。いい爺ちゃんじゃないか、三橋。
これを届けるのか。重大任務だな。
焼き上がったものを、バスケットに入れる。
この時、まだ俺は知らない。
埼玉に、濃い雨雲がかかり初めていたことに。



「くそっ!こんなことならローブじゃなくてカッパ着てくりゃ良かった!」

案の定、俺は雨に見舞われていた。
天気予報で雨なのは知っていたが、こんな大降りになるとは思わなかった。
西浦の方向に向かえば向かうほど雨が強くなってきて、箒が強風に揺さぶられる。
だが、この荷物を三橋に届けなければ。
俺はバスケットを、ローブの中にしまう。