阿部「お前なんかちっさくなってね?」

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820夏の一日
777スレおめでとう

一年中では困るけど、夏はおれの好きな季節だ。
すべてがくっきりしていて、限界まで暑くて容赦ない感じがいい。
ほんの子供の頃、熱射病でブッ倒れたことがあるらしいが全然覚えていない。
今日も真夏日を軽く超える気温で、さすがに人間は疲れがたまってきたような気がする一方、
ギラギラ輝く太陽と耳に絡む蝉の声は変わらず元気だ。
畑の野菜もぐんぐん育ってじいちゃんの機嫌もいいし、もうちょっと忙しくなければ海にでも
行きたいのになあと、ここのところ休みのないおれはどこかに行きたくてうずうずしていた。
「落ち着きはないけど、肝が据わっている」っておれに言ったのは誰だったかな。全然思い出
せないや。
大きな麦わら帽子を少し上げて、首に巻いたタオルで顔の汗を拭く。
早朝から出荷するための野菜を収穫し、それが終わったらトマトの脇芽を摘んだり雑草を取っ
たり乾燥しているところに水を撒いたりと働きづめだ。
おれは少し休憩しようかと作業を一旦中断して立ち上がり、腰を伸ばして拳でトントンと叩い
た。ずっと同じような姿勢で単調な仕事をしていたので、さすがに腰が痛い。
いつもの癖で畑のまわりをぐるりと見渡す。
すると、ずいぶん長いこと顔を見なかった懐かしいヤツが、遠くからこちらを窺っているのに
気が付いた。