しまむららしく、乗り遅れ
「オレは嘘は吐かないよ」
……三橋にだけは。そう続く言葉は、もちろん三橋に聞かせることなくオレの中に仕舞っておく。
オレはしまむらだしフツメンだし、半端に影が薄いとか浜田に対して半端に鬼畜とか色々言われているが、三橋の前では完璧な王子でありたいんだ。
三橋の右手を、そっと両手で包むように握る。
いつもボール(タマ・キンの意にあらず)を一所懸命に掴むこの手が夜になればめくるめく自慰行為に使われ、三橋の美しい造形をしたペニスを扱くことをオレは知っている。
ああ、三橋。三橋が昨日もペニスをシュコシュコいじくり天使の喘ぎ声を上げながら「阿部くん、あべ くん!」と叫んでいたなんて事…オレは聞いていないから。
窓に貼り付いてハァハァヨダレを垂らしまくりながら見てたのも、
ハンカチをギリギリ噛み締めて「阿部・抹殺計画☆」を立てたのも内緒にしておくから。
だから安心して、オレに全てを預けてよ。
男は唯一人守るべき相手の前ではあまり喋らないのが美徳と信じているオレは、この辺りのことも無論口に出さない。
三橋みたいな可愛いM-BOY(マゾ・少年)はCOOL(説明の必要すらないが…オレの代名詞)な男に惚れるものだろう…?
オレのチャームポイント第一位に燦然と輝く潤んだ瞳で三橋を見詰めて必殺アルカイックスマイルを繰り出すと、三橋はフヒッと愛らしく笑った。
はにかんだ表情、赤く染まりゆく頬…まるで春の妖精か、咲いたばかりの薔薇の花のような笑顔だ。
「い 泉、くん」
そんな素敵すぎる笑顔で三橋がオレを呼んだ。おお、三橋…オレの心は三橋だけのものだよ。
三橋の為なら、オレはどんな鋭利なナイフだって抜いてみせる。
この汚れて穢れきった世界を、君の為に壊そう。君の望む優しい世界を、オレが創ってみせるから。
なんだい…?と、声は出さず唇だけを動かす。三橋の手に唇を寄せ、昨晩は裏筋を執拗に擦っていた
人指し指の指先に唇を近付けていく。もう少しで淡いキッスを君にプレゼントさ。
「…あ の、泉 くん…それ しまむら シャツ、 カレーうどん の、染み…ついて る」
…… ………… ホワアアアイ!!!?!?!
OH、何という悲劇!ちくしょうカレーうどん、テメーこのヤロウ表へ出やがれ!!
ああ…オレの大事な大事な目に入れても痛くないほど大事なしまむらシャツ(割引特価380円)!!
すっかり取り乱してしまむらシャツに頬擦りをはじめた泉がこの日得られたのは、当然ながら「なんか コワイ」と怯える三橋の痛々しい視線だけだった。