阿部「風が語りかけます」

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690fusianasan
>>686

阿部君にどんなのがいい? って聞かれてオレは返答に詰まった。
どんなのがいいって、気持ちいいことならオレはなんでも好きだ。
触ったことない部分って最初はやっぱり怖いんだけど、阿部君は常にオレの様子を伺っていてくれるから、今は怖いとかそういうのはない。
ちょっと呼吸を落ち着けようと思って大きく息を吐く。
電気のついてない部室の中、もうすぐ泣きたくなるくらいの暑さが支配する季節がやってくる。
昼間はもう日によっては真夏のような暑さがあって夜のしっとりとした風は興奮した肌には心地が良かった。
部室の中は空調設備なんてないけど今は窓が開けてあるみたいで涼しい。
部屋の中は真っ暗、電気はつけていない。
オレ達二人がここに残っていることは誰にも知られちゃいけない秘密だから、今日は声我慢したほうがいい。
窓閉めちゃえばちょっとは平気かもしれないけど、暑いのはやだな。
阿部君も暑いのはきっと嫌だろうから、声は我慢しよう。
できるかな、大丈夫かな。
不安に駆られながら何度か口をぱくぱくとさせる。
そんなみっともないオレの動作を阿部君は暗闇の中でじっと待っていてくれた。
「今日、は……こないだ、みたいなの、が、イイ」
「こないだって、いつの?」
ちらりと阿部君が自分の名前のラベルがついたロッカーを見上げる。
このロッカーにこないだ使った色々な道具が入ってるんだってことをオレは知っていた。